銀チューバと比較して

比較をしながらこの楽器の特徴が浮き彫りになるといいのですが、音が出せない環境では限界もあることですし、部分部分を小さな写真で紹介するコーナーというわけです。画像の大きさが揃っていないあたりは笑ってお許しください。

レシーバーが細い

新旧ふたつの楽器に共通する最大の特徴です。ボア(マウスパイプ)自体はちょっと前のドイツ管よりは太いくらいですが、口元に近いところでに急激なテーパーがかかっていて、普通のシャンクのマウスピースは一般的な入り深さの半分と少しくらいしか入りません。銀チューバの方はほとんど円筒に見えていますが、こっちは周回をかけて比較的ゆっくりしたテーパーになっているためで、どちらもマウスピースの入り深さはまったく同じです。

高校時代はそんな違いなんてたいして疑問も抱かずに吹いて特に不都合も感じなかったわけですが、あるときデニス・ウィックのミディアムシャンクを楽器店で見かけ、これなら銀チューバにぴったり合うかもという気がして試奏もせずに買い込み、つけてみるとぴったりの上に吹奏感や音の質感がはっきりと向上してびっくりしました。やはり、こういうところのマッチング(マウスピースと楽器の相性)は大切なんだなぁと実感(遅い)しました。この楽器を紹介してくれたH先輩も、あんまりわたしがうるさく言うので根負けして?バック24Wのシャンクを削ってあわせたところやはり音が劇的に変わりました。

現在容易に入手できる市販品で対応可能なのはデニス・ウィックとペラントゥッチXS(SとAMは試したことがありません)くらいです。後者は品番は多いですが、専門店にも太管用しか在庫のない店がほとんどです。好みのマウスピースを「デニス・ウィックのミディアムシャンクに合わせて」などと指定して加工してもらうのが現実的だと思われます。わたしはもともとデニス・ウィック党なので、この点はノープロブレムでした。

追記:デニス・ウィックのマウスピースは2003年(だったか?)にモデルチェンジを行っています。シャンクの太さ(テーパーの程度?)がだいぶ変わり、ミディアムシャンクでは入りすぎてややぐらぐらします。新モデルはラージシャンクがちょうどいいでしょう。

パイプレイアウトは古典的

その他の管体デザインは、叩けばほこりの出そうな古典的かつプレーンなデザインです。銀チューバと金チューバ(?)、他のレイアウトはほとんど変わっていませんが、金の方にはきれいに4番が通っています。

大違いのロータリー部

ドイツでの改造の最大の眼目です。銀チューバは古いロータリーチューバにありがちなS字ジョイントですが、これが最新のフィンガーバー式に変更されており、運動性は抜群。必要な握力は銀チューバの3分の1くらいかも。

S字ジョイント フィンガーバー

非常識な?管体の薄さ

とにかく銀チューバは管体が薄い! ベル部の肉圧はコンマ7ミリほどで、肉圧分布はありません(つまり、一枚のシートを曲げ加工して管体ができているというイメージ)。破れ穴のあたりから、微妙に厚さ(じゃなくて薄さ)を想像していただけると思います。重量は同じサイズの一般的な楽器(400ミリベルの4/4サイズB管)の7割ほどしかありません。軽くて小さい楽器は音量が出ないとか音が割れやすいとかいうことがまったくの誤りであることを、わたしはこの破れ笠のぼろ楽器のおかげで肝に銘じることができました。本当に感謝しています。

新しいSt.Petersburg Tubaはこの点はまったく銀チューバをまねず、普通の肉圧分布をもつ普通のベルを使っています。商品性ということを考えるともっともなことですし音もしっかり同系列で不満をいう筋合いでもありませんが、やっぱりちょっと残念かも。完全な状態の極薄ベルからは、どんな音が出るんだろう…。

破れた極薄ベル

付属品のマウスピース

前節ではちょっぴり感動的??な活躍をしてくれたマウスピースですが、冷静になってみると確かにひどい代物です。音に関しては、市販品でも相性の悪いマウスピースならこういうのもあるかなという程度(付属品がそれじゃ困るけど)だと思われますが、いかんせん工作精度が低すぎます。スロートのセンターが出ていないくらいならまだしも?、リムにバリがあって吹いていると唇が痛くなるというのは尋常ではありません(苦笑)。おまけにメッキは洋白。こんなマウスピースならはじめからつけなければいいのに…。やや浅めのカップでスロートは中庸ですが、そこに何らかの主張が込められているようにはとても感じられません。

セミハードケース

Die Tuba訪問記でも触れられていますが、このケースは本当にいい出来です。プロテクションがしっかりしている割にとても軽く、移動がとても楽です。ジャストサイズのクッション材は、楽器をラフに入れるとマウスパイプで少しずつ削られてしまいます(マウスピースを抜くと糸屑がついている)。キャスターは背の高い外人さん用のデザインなのか、取っ手を高く持っていないと地面にこすれます。


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