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・本日のso-what?:2007年4月

※これ以前のリンクは、切れていることが多いと思われます。あらかじめ承知おきください。

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4/22/2007 我が意を得たり

Dear LogicPro.〜Rohan Stevenson

英国で活動する作曲家 Rohan Stevenson 氏が Logic Pro のスコアエディタに対する要望をまとめた文書。大きな問題のほぼすべてを言い尽くしています。

他にぱっと思いつくことを思いつくままに挙げると…

  1. パート譜に頻出する、連続する複数小節の全休符を1つにまとめ、見かけ上1小節内に「○小節休み」の意味の数字を書き込んだ表記(マルチ休符;Finaleなどでは長休符。楽典的な名称は知りません)のある小節の幅が広すぎ、一般の小節とのバランスが悪い。これを調整する方法は用意されていない。
  2. スラーの開始/終了位置が符頭の直上直下となっているが、スラーが音符の符尾側にかかるときは符幹の直上直下に、符頭側にかかるときは符頭の直上直下よりやや内側が標準位置となるべきである。
  3. 記号と音符の位置関係が、表示倍率によって微妙にずれることがある。表示倍率を上げて微調整を行っても、下げてページ全体を俯瞰したときに明らかにずれていたのでは使い勝手が悪い。
  4. 1段に複数のパートを声部を分けて表示しているとき、異なる音価、あるいは音程の音符が同じ拍に表示される場合は衝突を避けてほしい。また、これを修正するためにレイアウトツールで移動したとき、移動した音符に対してキーコマンドでスラーをかけると開始位置がおかしくなる。
  5. 設定によってエイリアスを楽譜として表示しないようにすることが可能だが、その際エイリアスのあった場所に空白が残ってしまう。表示しないエイリアスの幅は、少なくとも印刷時にはゼロとなるべきである。これができれば、リピートの部分を再生はエイリアスで実現し、楽譜に影響を及ぼさないことも可能となる(現状ではそれができない)。なお末尾に置いたエイリアスを非表示にすると、期待通り幅ゼロとなる。
  6. キーコマンドでスラーやクレシェンド、デクレシェンドを入力するとき、複数の音符を選択してその「始点」から「終点」にかかる仕様であり、音符を1つだけ選択したときには(キーコマンドでは)入力できない。選択した音符が複数ならば現在通り、1つならばそれを始点(または終点)として標準的な長さの記号が挿入される仕様に変更してほしい。
  7. cresc. や dim. のようによく使うテキストをスタイル付きで保存しておける「ライブラリパレット」がほしい。
  8. スペーシングのパラメータを、スコアとパートで別に持ちたい。欲を言えばインストゥルメントセットごとに(段当たり最大小節数の設定を含め)持ちたいところ。
  9. 打楽器などの1線譜の場合、テキストスタイルで選択したフォントによってはマルチ休符の小節数が休み記号に埋まりこんで見づらい。
  10. パート譜にページ番号を表示しているとき、ページ番号部分がマージンとして考慮されず、段と衝突することがある。再現条件は今のところ不明。
  11. リピートのかっこ記号(1かっこ、2かっこ…)のドラッグ可能エリアが広すぎ、かっこをかけると五線上部の細かな編集がやりづらい(Ctrl-ドラッグで拡大表示しようとすると、空白領域からドラッグを開始したつもりでもかっこ記号がドラッグされてしまう)。
  12. ページ番号部に指定できるはずの埋め込み文字列が正しく認識されない(マニュアルの記述が不親切なのが原因です)。
  13. 1つのMIDIチャンネル内で声部を分け複数の段として表示しているとき、記号類は「声部(チャンネル内の仮想チャンネル)」ではなく「譜表」として番号で管理される。音符の声部番号と記号の譜表番号とは一見同じもののようだが実は別物であり、特定の声部番号だけ取り出すスコアスタイルを作っても、取り出されるのは音符だけで記号は追随しない。

最後のは、次のようなことです。ストバイとセコバイの演奏を1つのMIDIチャンネルに記録し、声部を分けて別の段に表示することはでき、各種記号を上下の段に自由に配置することも可能ですが、これをさらに「ストバイのパート譜」と「セコバイのパート譜」に分けようとすると、スコアスタイルで指定できるのは声部番号(仮想チャンネル番号)だけであって、特定の声部番号を呼んでも音符だけしか抽出されず、記号は正しく表示されません(声部番号1のパートにすべての記号が表示され、2以降のパートにはまったく表示されない)。

Logic の最初期にはノーテーション機能が大きな売り物でした。近年オーディオ処理機能の強化ばかりが目立つのは市場の要求ですからいたしかたないとして、毎回地味ながら加えられてきた改善がここのところ先細り気味に感じられ、このまま切り捨てられるのかと不安に駆られます。

Logic で演奏用の楽譜を制作する人は、アマチュアに限っても少数派でしょう。表記の自由度や最終的な見栄えのよさは、Finaleなどの専用プログラムの方が確かに一枚も二枚も上手です。しかし、「浄書」を考慮しない作業 -- 作編曲そのもの -- の環境として考えるなら、Logic は一般的ノーテーションソフトなどと比較するのも阿呆らしいほど桁外れに快適なのであり、せいぜい数ページのスコアをお上品に仕上げる以上の用途となると、どうしても Logic の方に手が向いてしまうのです。


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